ひとこと
クリエイターの青春と創作の意味。
あらすじ
東北に住む少女藤野は学年新聞に4コマ漫画を載せていた。同級生からも近所の住人にも褒められ、漫画なんて簡単だと思っていたが、ある日不登校の生徒・京本が同じ学年新聞に掲載した4コマ漫画の画力に衝撃を受ける。「同じ4年生で私より絵がうまいやつがいるなんて許せない!」と感じた藤野はそこから絵の技術を磨くべくデッサンの猛特訓に励む。
この2人の少女が大人になるまでを通して、創作とは何か?を描くお話。
概要
「ファイアパンチ」「チェンソーマン」で有名な藤本タツキ原作。
もとはジャンプ+で公開された読み切り。
監督 :押山清高
製作国 :日本
上映時間 :58分
劇場公開日:2024年06月28日
感想※ネタバレあり
2人の主人公がクリエイターとして成長していくことをメインにしながら、2019年に起きた凄惨なテロを消化するという意味もある。
主人公たちの成長という点では、得意分野で自信を持っているときに、自分を圧倒的に上回る相手があらわれるシーンがまず刺さる。
努力しても努力しても越えられない、と思ったら、やはり相手は自分の何倍も努力していたことがわかる。藤本タツキほどの漫画家にもそういうことがあったんだろうかと思うと親近感がわくし、感慨深い。
そしてまたその相手に「ファンです」と言わせる展開も見事。劣等感は憧れなので、その喜びをはじけさせ、雨の中スキップで帰宅する藤野の姿から、スクリーンを通して感情が伝わってくる。
そして終盤に起こる衝撃的事件。
犯人の「盗作された」という発言からも、2019年に起きた京都アニメーションでのテロを暗喩していると受け取れる。
クリエイターにとって今最も恐ろしいのはもしかしたらこの犯人のような存在ではないか。
だれかを楽しませようとして描いていたはずなのに、その大衆の中から理不尽で小さな刃が向けられる。
動機の理解も難しい。納得することができない。
どうしたらよかったのか?という問いが浮かび、藤野は「部屋から出て漫画を作ることに誘わなければ・・・」と自分を責める。が、そんな藤野を救うのもまた創作という回収で、物語は終わる。
結論を明確かつ簡潔にしているあたり、最近あまりない作風だと思うのでとても好きだった。
個人的には京アニ事件のような事件は、二度とこのような犯人を生まないようにという対策を社会規模で論じられるべきではないかと思うが、クリエイターからクリエイターへのエールとしてはとてもきれいなのではないかと思った。
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